Kingdom Chronicle 総括 ― 同盟のゲームを作って、届いたもの・届かなかったもの

ご無沙汰しております。前回の攻略記事から、2か月以上も間が空いてしまいました。

その間も『Kingdom Chronicle(王国創世記)』の更新は続けており、先日のv2.3.0では実際に操作しながら進めるチュートリアルを実装し、本日のv2.4.0ではUI/UXの改善を行いました。

やりたかったことにひと通り手が届きましたので、今回は区切りとして本作を振り返ってみたいと思います。うまくいかなかったことや、この先のことも含めてお話しします。

■ 改めて、どんなゲームを作りたかったのか

本作のコンセプトは、とてもシンプルです。

シンプルなルールと、シンプルな攻略方法で成り立つゲームであること。

そして、攻略の肝が分かりやすいことです。
攻略記事でも繰り返し書いてきましたが、本作で最も大切なのは同盟です。誰と組み、誰との関係を保ち、どこで手を切るのか。やるべきことがはっきりしているため、「何をすればよいのか分からない」と迷う場面は少ないと考えています。

もう一つこだわったのが、運任せのゲームにしないことです。
最高難度でも運に頼らず安定してクリアできるよう、開発者自身が100回以上プレイしながら調整を重ねました。負けたときに「運が悪かった」ではなく、「あの外交が甘かった」と振り返っていただけるゲームにしたいと考えていました。

一方で、運の要素を抑えた結果、少し先を読む力が求められるゲームになりました。目の前の状況から挽回しづらい作りになってしまったのは、調整不足だったと感じております。
本作では、かなり手前の段階から計画を立てておく必要があります。特に大切なのが、相手勢力がどれだけ戦い続けられるか、その継戦能力の見積もりです。ここを見誤ると、いざ攻め滅ぼそうという段階で詰め切れず、相手の頑強な抵抗にうんざりしてしまう――そうしたお声もいただいております。

■ 体験版の公開が遅れたことによる、思わぬ影響

ここからは、うまくいかなかったことについてです。

発売後、早い段階で低評価のレビューをいただき、そこで販売本数の伸びが止まってしまいました。

その後、体験版を公開してからは返金の数も落ち着きました。購入前に「ご自身に合うかどうか」を確かめていただく手段を用意していなかったことは、明らかな失策だったと考えております。

当初の見込みとしては、無名の個人開発ですので、手に取ってくださるのは主にXやこのブログをご覧の方、つまりFree版の配布をご存じの方々が中心になるだろうと考えていました。私のSLGに対する考え方や作り方を知ったうえで、「次回作にも期待しています」という応援の意味を込めて購入していただけるのではないか――そう考えていたのです。

何しろ本作は、時間も予算も限られた中で、自腹を切って世に送り出したゲームです。スタジオ白猫斎、くそげ工房は「こういうゲームを、こういう風に作ります」とお伝えする、名刺代わりの意味も込めておりました。

ところが実際には、Steam上で初めて本作を知ってくださった方にも多く手に取っていただいていたようです。そうした方々に、本作がどのような方向性のゲームなのかを事前にお伝えしきれていなかったことが誤算でした。

レビューの中には、強い言葉で書かれたものもありました。正直に申し上げると、こたえました。
それでも、わざわざお時間を使って書かずにはいられない程度の何かは、このゲームで残せたのだろうと前向きに受け止め、気持ちを奮い立たせました。

この反省は、次の作品で体験版の準備を最優先に進めるという形で活かしております。

■ 譲れなかった基本思想

プレイしてくださった方から、いくつかご提案もいただきました。ありがたく拝読しております。

ただ、本作のコンセプトでは、要素を追加していく方向での調整はあまり考えておりませんでした。
要素を足していけば遊びの幅は広がりますが、そのぶんルールは複雑になり、「攻略の肝が分かりやすい」という最も大切な部分がぼやけてしまうためです。

いただいたご意見の中で最も多かったのが、複数の拠点からの同時出陣です。
こちらは実際に実装したうえで、モンテカルロシミュレーションによってBOTに数万回プレイさせ、検証を行いました。

その結果、戦線が停滞するボトルネックの位置が大きく手前に移り、拠点の変動が極端に少なくなってしまいました。
さらに、拠点が1つになった勢力は、その時点でそのまま滅亡へ向かってしまいます。攻めようにも相手は複数の拠点から援軍で対応してくるため突破できず、逆に攻められると単独の軍で応戦することになるため、じり貧になっていくのです。シミュレーション上、拠点が1つの状態から勢力を伸ばせた勢力は1つもありませんでした。

拠点の配置で見ても、前線に突き出た拠点の取り合いになり、最終的には特定の拠点の争奪に終始して、どの勢力も抜け出せないまま期限を迎えるようになってしまいました。
そのため、この仕組みは実装を見送ることにいたしました。

その代わりとしてご用意したのが、天下布武モードです。
天下布武モードは、ゲームの基幹となる大きなシステムを変えずに実装できる大型アップデートでした。
ある程度予想はしていましたが、自軍だけで複数の出陣を重ねると、兵数がものすごい速さで溶けていきます。そこで、天下布武を宣言した側と連合軍の側とで、徴兵効率に大きな差を付けました。難易度によって異なりますが、Hardでもかなり兵を集めやすくなっています。それでも連戦が続くと、兵は不足気味になるのですが。

こうした判断は、どれも対称性のルールが土台になっています。本作では原則として、プレイヤーにもAIにも肩入れしないことを大切にしています。

「効果が小さい」というお声をいただいた計略も、同じ理由から控えめにしています。計略の効果を大きくすれば、AIも同じ計略を使ってきます。そうなると、AIから次々と計略を仕掛けられる「計略ハラスメント」とでも言うべき状態に、プレイヤーの方が耐えられないだろうと考えたためです。

AIの強さは、ストレスへの耐性が無限大という点にもあります。何度失敗しても懲りずに繰り返すことを、まったく苦にしません。これがなかなか厄介なのです。

v2.3.0のチュートリアルや、今回のv2.4.0のUI/UX改善も、遊びを増やすためではなく、今ある遊びに迷わずたどり着いていただくための更新です。

■ 実は、お手本にしたゲームがあります

お気付きの方がいらっしゃるかは分かりませんが、実は本作には、お手本にしているゲームがあります。

それは、モバイル版の『信長の野望』です。

対人のゲームで、とにかく同盟が最重要でした。むしろ、同盟さえ上手く組めればそこそこ戦える、というバランスだったと記憶しています。

私も当時リアルタイムでプレイしておりましたが、初手で同盟を結び、密書を連発して親密度を上げ、お互いの援軍数を最大にする。これが初動の定石でした。

本作の「親睦で信頼度を上げ、援軍を引き出す」という流れに、その面影を感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

援軍によってのみ名声を上げることができ、その名声によって出陣できる兵数が増減する――という仕様も、そのまま採用しています。
Free版は、かなりこの形に沿った作りになっています。Steam版でも、名声によって出陣兵数が決まる仕様はそのままですが、名声の自然減少や名声が上がるイベントを加え、名声を得る手段を増やしました。また、一度名声100に到達すると下がることがない、という状況にも手を入れています。

兵科についても、モバイル版の鉄砲を魔法に置き換えています。鉄砲は天候によって、晴れなら強く雨なら弱いという二択でしたが、本作の魔法は効果が大きく変動する形で実装しました。いわば博打の兵科です。一方、重装はモバイル版の『信長の野望』には無かった、本作で新たに加えた要素です。

特技名もいくつかそのまま持ってきておりますので、お気付きになった方もいらっしゃるかもしれません。信長の特技だった「抜擢」などは、名前もそのままです。

■ 凍結した次回作について

もともとの構想では、本作である程度の評価と実績を積むことができたら、次は管理するリソースを少しずつ増やした戦略SLGへとステップアップしていく予定でした。以前のコラム「シンプルなSLGを作る理由 〜あの骨太な世界への、最初の一歩〜」で書いた、まさにその「次の一歩」です。

実際、かなりのところまで制作を進めておりました。
しかし、本作の結果を受けて、その開発は一旦凍結することにいたしました。予算的な事情もございます。

応援してくださっていた皆様には、大変申し訳なく思っております。
いずれ余力ができましたら、『Kingdom Chronicle』のパワーアップ版の開発に着手したいと考えております。

■ そして『Kingdom Chronicle: Ancient Saga』へ

代わりに着手したのが、新作『Kingdom Chronicle: Ancient Saga』です。

本作の舞台設定を使い、SRPGの要素を盛り込んだゲームとなっております。

『Kingdom Chronicle』は、ゲーム内にこそ武将の経歴などのフレーバーテキストを一切載せていませんでしたが、世界観はかなり作り込んで設定しておりました。年表や世界地図を用意し、2作目、3作目とシリーズを重ねていく構想も練っていたため、冒頭のストーリー設定はすんなりと決まりました。

もともと、初期の『ラングリッサー』にあった「傭兵を雇い、指揮範囲と指揮効果がある」仕組みと、『ネクタリス』の「支援と包囲」の仕組みを組み合わせたSRPGを作ってみたいと、漠然と考えておりました。
そこで、国盗り系の戦略SLGから方向転換し、この形で開発を進めることにいたしました。

戦術マップについては、以前『SymphonyOfSteel』の開発で培ったヘックスグリッドのノウハウをライブラリとしてまとめていたこともあり、かなり早い段階で形になりました。

つまり、完全にゼロからのスタートではなく、舞台設定の土台と、要となる戦術マップのヘックスグリッドによるタクティカルバトルの仕組みが、ある程度できあがった状態で手元にあったということです。

Steamのストアページはすでに公開しております。気になった方は、ウィッシュリストに追加していただけますと励みになります。
体験版も準備を進めております。

▶ Kingdom Chronicle: Ancient Saga(Steam)
https://store.steampowered.com/app/5278020/

■ おわりに

『Kingdom Chronicle』は、私にとって初めてSteamで発売した作品でした。
思い通りにいかなかったことも多くありましたが、遊んでくださった方、攻略記事を読んでくださった方、Free版から追いかけてくださった方、レビューを書いてくださった方、本当にありがとうございました。

ご購入後、早い段階で離れてしまわれた方もいらっしゃるかと思います。その後もチュートリアルの実装やUI/UXの改善など、更新を重ねてまいりました。もし気が向かれましたら、またお手に取っていただけましたら嬉しく思います。

同盟を組み、手を切り、また組み直す。そうした盤面のやり取りを、これからも楽しんでいただけましたら幸いです。

▶ Kingdom Chronicle(Steam)
https://store.steampowered.com/app/4855560/Kingdom_Chronicle/