前に、昔の光栄ゲームが好きだったという話を書いた。
画面いっぱいに数字が並び、武将の能力値を眺め、地図を見ながら次の一手を考える。
少し面倒で、少し不親切で、でもずっと遊んでいられる。
あの「数字の向こうに国が見える」感覚が、私はとても好きだった。
その記事を書いたあとで、ふと思ったことがある。
あの面白さに、今の人たちはどうやって出会うんだろう、と。
■ 「面倒くさいから面白い」は、入口では「面倒くさそう」になる
昔の歴史SLGや戦略SLGには、面倒くささがあった。
そして私は、その面倒くささこそが面白いと思っている。
ただ、これは少し残酷な話でもある。
「面倒くさいから面白い」は、すでにその面白さを知っている人の言葉だ。
初めてその画面を開いた人にとっては、ただ「面倒くさそう」で終わってしまう。
画面いっぱいの数字。
たくさんのパラメータ。
何をすればいいのか分からない最初の数十分。
刺さる人には深く刺さる。
けれど、刺さる前に閉じてしまう人も、たぶん同じくらいいる。
私が愛したあの沼は、入口がとても高い。
そして、その高さのせいで、たどり着く前に引き返してしまう人がいる。
それは、少しもったいないことだと思う。
■ だから、入口だけを低くしたかった
今、私は『王国創世記 -Kingdom Chronicle-』という戦略SLGを作っている。
このゲームは、シンプルだ。
管理する要素を絞り、画面を見やすくし、直感的に触れるようにしている。
これは、骨太なSLGを否定したかったからではない。
むしろ逆だ。
あの骨太な世界が好きだからこそ、その入口を作りたかった。
いきなり複雑で、大量のリソース管理を求められるゲームは、初心者にとって食わず嫌いの対象になりやすい。
面白さを知る前に、難しさで弾かれてしまう。
だから、まず気軽に触ってもらえるようにした。
ターンを進める。
武将を配置する。
国を少しずつ広げる。
その「国を動かす楽しさ」の片鱗を、まず味わってほしい。
シンプルなのは、手を抜いたからではない。
何を残し、何を削るかを考え続けた結果だ。
正直なところ、足すよりも削るほうがずっと難しかった(笑)



■ シンプルの中に、奥行きを忍ばせたい
とはいえ、ただ薄いゲームを作りたいわけではない。
私がもう一つ大切にしたいのは、少ないルールやリソースで、どこまで奥深さを出せるか、という点だ。
シンプルなものは、放っておくと単調になる。
これは作っている自分が一番よく分かっている。
だから、その単調さを別の要素でどうカバーするかを、ずっと思案している。
たとえば、戦争で押し合うだけが盤面を動かす方法ではない。
計略で揺さぶる。
忠誠の低い武将を引き抜く。
適度に親睦を深めて、関係を変えていく。
少ない要素の中にも、膠着した盤面を動かす手は隠してある。
すぐには見えないかもしれない。
そこは私の見せ方の課題でもあると思っている。
このあたりは、また別の記事で、実際のプレイを通して紹介してみたい。
開発者が考える特技ランキングなんかも、やってみたら面白いかもしれない(笑)
■ 「こうだったらいいな」が生まれたら、それはもう
私がこのゲームで一番作りたいのは、プレイした人の中に「こうだったらいいな」が生まれる状態だ。
ここでもっと計略が使えたら。
こういう外交ができたら。
この武将に、もっと活躍の場があれば。
プレイしながら、そんな要望が頭に浮かんでくる。
実は、その感覚こそが、SLGにハマる入口なのだと思う。
物足りなさは、欠点であると同時に、次の興味でもある。
「もっとこうしたい」と思い始めた人は、もうSLGの面白さの側に立っている。
もし、このゲームを遊んで「物足りない」と感じた人がいたなら。
その人は、たぶん、もっと骨太なSLGを楽しめる人だ。
『烈風伝』や『ロイヤルブラッドⅡ』のように箱庭を作り込む奥深さも、『提督の決断Ⅲ』のように数字と睨み合う歯ごたえも、その先には待っている。
だとしたら、それはこのゲームにとって、失敗ではない。
むしろ、入口としての役割を果たせたのだと思う。
■ SLGの沼へ、ようこそ
私の願いは、少し欲張りかもしれない。
『王国創世記』で「SLGって面白いかも」と思ってくれた人が、いつかもっと複雑で骨太なSLGに手を伸ばしてくれたら。
あの、数字の向こうに国が見える世界に、たどり着いてくれたら。
このゲームを、終着点ではなく、入口にしたい。
そして、もう一つ。
長くSLGを愛してきた人たちが、その新しい仲間を迎えてくれたら、と思う。
このジャンルは、決して万人向けではない。
それでも好きだと言い続けてきた人たちが、ずっと支えてきた。
その裾野が、少しでも広がってほしい。
新しいプレイヤーが、SLGの面白さに出会う最初の一歩になれたら。
それが、このゲームに込めた、一番の願いだ。
少し古くて、少し面倒で、でもずっと遊んでいられるSLG。
その入口に、一人でも多くの人が立ってくれることを願っている。
『王国創世記 -Kingdom Chronicle-』は、たぶん、その思いから始まっている。
